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通訳の凡ミスによって波紋広がった安倍首相発言~朝日スクープが事実なら外務省=日本政府の重大なミスだ


ダボス会議における安倍首相の発言が国内外で波紋を広げています。

24日付読売新聞電子版速報記事から。

「日中は大戦前の…」発言報道、首相真意説明へ

菅官房長官は24日午前の記者会見で、安倍首相が日中関係を第1次世界大戦前の英国とドイツの関係と「似た状況だ」と発言したと英国メディアなどが伝えた問題について、「外交ルートを通じて首相の真意をしっかりと説明する」と述べた。

報道したイギリス放送協会(BBC)や英フィナンシャル・タイムズ紙などに対し、在英日本大使館の担当者が実際の発言を正確に説明する方針だ。

首相の発言は22日午後(日本時間22日夜)、スイスでの世界経済フォーラム年次総会(ダボス会議)で各国の報道機関幹部らと懇談した際のことで、政府は首相の日本語による発言の一部が正確に理解されなかった可能性があるとみている。

首相は懇談で、沖縄・尖閣諸島をめぐる日中両国の武力衝突の可能性を問われ、「英国とドイツは、第1次世界大戦前、貿易で相互に関係が深かった。日本と中国も今、非常に経済的な結びつきが深い。だからこそ、そういうことが起きないように事態をコントロールすることが大事だ」と述べた。

(2014年1月24日14時57分 読売新聞)

http://www.yomiuri.co.jp/politics/news/20140124-OYT1T00530.htm?from=top

 うむ、「政府は首相の日本語による発言の一部が正確に理解されなかった可能性がある」として「外交ルートを通じて首相の真意をしっかりと説明する」としています。

ネット言論空間でも今回の安倍発言に対する批判意見が多数みられます。

例えば池田信夫氏のBLOGOSのエントリー。

安倍首相はダボスでどう発言したのか

http://blogos.com/article/78649/

懇談に出席していたRachman記者の記事を引用したうえで「公の場で首相がいうべきことではないだろう」と批判しています。

失礼して当該箇所をエントリーより引用。

彼が懇談の司会者だったので、この記事が正確だと思われるが、安倍氏が「第一次大戦前の英独とsimilar situation」(Peston記者の表現ではredolent)と発言したことは間違いない。安倍氏は「両国は経済的に緊密な関係にあったが、戦争を防げなかった」とのべ、「偶発的な戦争」を防ぐために日中の軍どうしのコミュニケーションが必要だとしている。

全体の論旨はそうおかしなものではないが、TIME誌も「日中は戦争に突入するのか?」という質問に「安倍は否定しなかった」と書いている。日中関係を戦争直前の敵国との関係にたとえるのは「まもなく戦争になる」と解釈されてもしょうがない。公の場で首相がいうべきことではないだろう。

うむ、池田氏が具体的に指摘している通り、確かに「安倍氏が「第一次大戦前の英独とsimilar situation」(Peston記者の表現ではredolent)と発言したことは間違いない」のであれば、「公の場で首相がいうべきことではないだろう」という指摘もごもっともと思われます。

しかしです。

安倍首相は“similar situation”(似た状況)などとは発言していない可能性が大なのであります。

つまり安倍さんは核心部分において言ってもいないことで欧米や中国や国内からも批判されている可能性が大なのです。

どういうことか、朝日新聞がスクープしています。

首相発言、欧米で波紋 日中関係、大戦前の英独例に説明

2014年1月24日11時55分

http://digital.asahi.com/articles/ASG1S1VRPG1SUHBI003.html

 記事から核心部分を引用。

この発言を通訳が伝える際、英独関係の説明に「我々は似た状況にあると思う(I think we are in the similar situation)」と付け加えた。首相が英独関係を持ちだした意味を補ったとみられる。この通訳は、日本の外務省が手配した外部の通訳だったという。

“I think we are in the similar situation”(我々は似た状況にあると思う)との発言は通訳が勝手に付け加えたのです。

だとすれば、安倍首相は現在の日中関係が第一次世界大戦前の英独の関係と「似た状況にある」とは発言していなかったのです。

 ・・・

日本政府は「首相の日本語による発言の一部が正確に理解されなかった可能性がある」と言っています。

しかし通訳ミスが事実ならば、これは「正確に理解されなかった可能性」ではなく、精度の悪い通訳を手配した外務省=日本政府の完全なる重大なミスであります。

(木走まさみず)


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