本サイトは個人的なまとめサイトです。 記載内容に誤り等がありましたらご指摘ください。

ウクライナで何が起きているのか―理解のためのクイックガイド - WSJ.com

 ウクライナの首都キエフで今週、再び反政権デモ隊と治安部隊が衝突した。ヤヌコビッチ大統領は、暴力の停止と、大統領の退陣を求める野党側との話し合いを再開するよう求める国際社会からの強い圧力を受けている。ウクライナの政情危機に関して知っておきたい事実をまとめた。

<反政権デモの原因は何か>

 反政権デモは昨年後半、ヤヌコビッチ大統領がロシアからの圧力を受け、欧州連合(EU)との貿易や政治に関する協定締結を拒否し、ロシアから150億ドル(約1兆5400億円)の支援を受け取ったことをきっかけに始まった。数万人の人々がデモに参加し、数週間後には公務員の腐敗や警察の暴力に対する幅広い抗議活動に発展した。デモ隊は3カ月近くキエフ中心部を占拠し、ヤヌコビッチ大統領の退陣を求めている。

<今は何が起きているのか>

 政府によるデモ隊の取り締まりと野党との交渉の行き詰まりで抗議活動がさらに拡大し、数千人の国民がデモ隊を支援するため道路封鎖を突破し、首都へ向かった。キエフ中心部では20日、暴力が再燃した。その数時間前に政府とデモ隊との間で一時「停戦」が合意されたばかりだった。デモ隊が独立広場に設けられた警察のバリケードを破り、治安部隊に向かって突進した。その後、銃撃が起こり、さらに死者が出た。20日遅く、ヤヌコビッチ大統領の代理人は、大統領が野党のリーダーらと話し合うことになっていると述べた。21日になって、ウクライナ大統領府は政治危機の打開に向けた野党指導者らとの話し合いで暫定合意に達し、現地時間正午に合意文書に署名する意向を示した。

<それはなぜ重要な意味を持つのか>

 抗議活動は、西欧と東欧に接するウクライナに対するEUとロシアの政治・経済的影響力をめぐる闘いを反映している。ソ連時代に支配していた国をまとめ、こうした国への影響力を取り戻したいロシアのプーチン大統領にとって、ウクライナを明確な政治的友好国としておくことは重要だ。一方、ウクライナは、自由貿易合意の見返りに民主化の促進を意図するEUのターゲットとなってきた。

<キエフの暴力に対する国際社会の反応は>

 多くの国が暴力行為に対する強い反対姿勢を打ち出し、制裁措置の発動を示唆する国もある。EU当局者は20日、ヤヌコビッチ大統領に選挙の早期実施で圧力をかけると述べた。ロシアは早期選挙を求める動きは西側のウクライナに対する影響力を強めようとする試みの一環だと主張している。さらにEUは外相会議でウクライナに制裁措置を発動することで合意し、その規模は政治的暴力がどの程度継続するかにかかっているとの見解を示した。国連は19日、死者を出したデモ隊と治安部隊との衝突について、独立機関による調査を求めた。また米政府は、おそらく欧州各国と連携する形で、ウクライナの政府高官に対する制裁措置を検討中だと明らかにした。ロシアは抗議活動をクーデター未遂事件だと主張し、野党指導者に対し直ちにすべての暴力を停止するよう要求した。

<他に何が争点になっているのか>

 ロシアから欧州へ天然ガスを送るパイプラインはウクライナを経由している。ロシアの国営ガスプロムは欧州のガス需要の4分の1を賄っており、その大部分がウクライナを経由して欧州に供給されている。ウクライナも自国で消費する天然ガスの大半をロシアから調達しており、ウクライナ政府高官はこのパイプラインに対する支配力を政治交渉の切り札に利用しているとして、ロシアを非難している。2006年と09年には、料金の支払いをめぐる対立を背景にガスプロムがウクライナへのガス供給を停止した。この影響で欧州各国へのガスの供給も止まった。

<ウクライナ経済はどんな状況か>

 ウクライナは現在、リセッション(景気後退)に陥っており、大幅な経常赤字に苦しんでいる。ウクライナ政府はEUとの協定を拒否した理由の1つとして、厳しい経済状況を避けるためにロシアとの関係改善が必要であることを挙げた。ウクライナ経済省は今週、2015年に支払い義務が発生する対外債務を返済できるかどうかは、その多くが「ロシアとの関係にかかっている」と述べた。政治的な混乱はウクライナ市場への下押し圧力となっている。


ログイン