目次
柳沢伯夫厚生労働大臣「産む機械」発言問題
はじめに
柳沢伯夫厚生労働大臣が2007年1月27日島根県の県議会議員の会合で後援した際に、女性を産む機械に擬えた(なぞらえた)発言が大きな批判を浴びている。 しかし、マスコミで報道される内容は断片的で、とても本人の最も言いたかったことを伝えているとは思えない。 とはいえ、主旨が正しければ表現に問題があっても良しとは思わぬ。主旨と表現のどちらを論じるのが適切かを判断した上で批判していない政治家・報道機関は信頼できないと少々思うので整理を試みた。
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論点
人口問題・少子化問題を大雑把にまとめると以下のような過程を経る。柳沢大臣の発言を批判する人たちがどの点を問題にしているのかを整理してみた。
STEP | テーマ | 論点 |
---|---|---|
1 | 国力維持の是非 | 日本は国力を維持すべきだ。 |
2 | 人口と国力の相関関係 | 国家にとっては人口が減ることは国力減退につながる。 |
3 | 国力維持のための人口対策の是非 | 国力の維持のために日本は人口を少なくとも維持、さらには増やす方向で施策を実施すべきだ。 |
4 | 移民に頼らない対策の是非 | 方策としては親を増やすか、親がつくる子供の数を増やすか、子供を増やすかのいずれかしかない。 ①親を増やす施策の例:大人の移民を受け入れる ②親がつくる子供の数を増やす施策:出産・育児等に補助金を出す ③子供を増やす施策の例:子供の移民を受け入れる。 しかし、日本では移民を受け入れないという方針が徹底されているため、事実上、2番目の方法しかない。 |
5 | 平等な対策の是非 | 人口を維持するには1家庭あたり2人以上の子供をもうけることが必要。 (2人の親から2人未満の子供しか生まれないのであれば人口減少は当たり前) |
6 | 家庭に対する対策の是非 | 家庭が2人以上の子供を持つ意欲を高める施策が必要。 |
7 | 具体的な施策の是非 | 補助金や育児支援体制など、子供を持つ親の負担を軽減する具体的な施策として何が適切化を論じることが必要 |
批判内容と分類
女性を産む機械に喩えたことに対して
- 表現が蔑視的である。
- 女性を機械に喩えるのは女性蔑視である。
- 柳沢氏が侮蔑的な視点を持っていたかどうかは分からないが、そう捉えられても仕方が無い表現だと思う。
- だが、表現が稚拙である点の批判を繰り返すだけでは単なる個人攻撃である。人口問題・少子化問題の解決には繋がらないのでは?。
- 少子化を女性の責任とするような短絡的な発想を少子化問題の責任者が抱いているかもしれないという危機感を感じる
- 女性が産まないのは、女性だけの問題ではない。
- 女性が産まない理由を「女性の努力不足」など短絡的に判断している可能性を感じさせる。
- 女性が産む為には、託児所・保育園等の充実など、周辺環境の整備も必要な要素だが、それを認識していないような印象を受ける。
- 議論としては、具体的にどうすべきか(STEP7)に踏み込んでいる分、建設的な意見だと思う。
柳沢厚労相が「2人以上子どもを持ちたい若者」を「健全」と表現したことに対して
- 「女性蔑視(べっし)が頭の中に染み付いているようだ。看過できない」(民主党の鳩山由紀夫幹事長)
- 女性を「産む機械」にたとえた表現は女性蔑視ととられても仕方が無いと思うが、「2人以上子供を持ちたい健全な若者」から女性蔑視を感じるのは無理が無いか? 鳩山氏は、もう少々詳しく、どの点が女性蔑視に当たるのかを説明したほうが良いだろう。
- 「かつての『産めよ増やせよ』とお国のために子どもを産んだ考えと同じようだ」(国民新党の亀井久興幹事長)
- 国力の維持の手段として人口対策を行うことを否定している(STEP3での議論)ように受け取れるが、明らかでない。
- 少子化問題を国が扱うのは国のためになるからであって、もし純粋に家庭や女性の問題であると主張するならそれは完全にプライベートな問題であるという事だ。従って「少子化問題は国が考えることではない」と主張しているのと同じ。しかしそれでは、人口が減ることにより国力が減退することを問題としている人たちに対しては説明不足である。
- 亀井久興氏は、国力維持のための人口対策が不要である事を説明するため、人口が減っても国力を維持する方法を示すか、又は、国力を維持しなくても良いという論説を示すとなお良いのだが。
- 「女性不在、また頭数で(少子化対策を)言ったことに強く抗議する」(社民党の福島瑞穂党首)
- 「人口対策・少子化対策を政策として実行する際に数値目標は馴染まない」という趣旨だろうか?
- 私は、数値目標は女性を縛るのではなく、政策を実行する当局を縛るものだと考える。よって私は数値目標は必要だと考えるため、福島氏の批判は適切ではないと思う。
- 「2人以上産まない女性は健全じゃないのか」(民主党の輿石東参院議員会長)
- 柳沢氏は「子供を2人以上欲しいと思う健全な男女もいる」と発言している。女性のみを指して言っている訳ではないので、まず輿石東氏の発言は不正確。
- 「2人以上産まない男女は健全じゃないのか」という意味で言ったのであれば、輿石東氏は2人未満しか産まない家庭が健全であると主張していることになる。それでよいのか?
参考
- 民主党の菅直人代表代行が「年初以来、党大会などで『生産性が高いと言われる東京や愛知でも、子供を産むという生産性が低い』と、何度か発言した」(東京新聞2月6日付「うさぎの耳」)【記事】
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