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北朝鮮問題―関係改善を望むならば:朝日新聞デジタル

 北朝鮮が今年、韓国に対し融和的な姿勢に転じている。金正恩(キムジョンウン)政権下で遅まきながら、対外関係の改善を探り始めた。

 国を一党支配する朝鮮労働党は来年、創建70周年を迎える。それまでに国民に新体制の手腕を印象づけようと、経済の再建を図るねらいがあるようだ。

 挑発路線から対話へかじを切るには、行動を示すしかない。事実上破綻(はたん)した経済を本当に立て直したいと願うなら、避けてはならない道がある。

 ただちに核の全面放棄へ向けた行動をとることである。

 国際社会の総意に背いて核開発を続ける北朝鮮との関係改善を望む国など、ない。

 正恩氏はその現実を見すえ、先代の金正日(キムジョンイル)総書記がとった軍事最優先の路線から決別する分別を持つべきだ。

 韓国への対話の誘いは段階的に真剣味を帯びてきた。先月、互いをののしり合う行為の停止を提案した。これまで消極的だった南北間の離散家族の再会事業にも応じる方針を示した。

 韓国側は、過去にも北朝鮮が融和姿勢のあとに挑発行動を繰り返したとして、慎重に真意を見極めている。

 金正恩政権は、核開発と経済建設を同時に進める「並進路線」を掲げている。

 来年までに、これまで強調してきた「生活の向上」を国民に実感させねばならない。南北対話やそれに伴う食糧・肥料支援などで実績をつくりたい。

 食糧事情が上向けば、1980年以来となる党大会の来年開催も現実味を帯びる。そんな目標を見すえているのだろう。

 父の急死で権力を継いだ正恩体制は盤石とは言えない。

 正恩氏の後見役と目されていた張成沢(チャンソンテク)氏の昨年末の処刑劇は今も波紋を広げている。

 その際、北朝鮮は経済停滞など、あらゆる問題の責任を張氏に押しつけた。その粛清を終えたことで国内の引き締めになった半面、今後の経済失政を言い繕う道は細った。

 そうした流れの中に、日本への接触の動きもあるとみるべきだろう。先般訪朝した参院議員のアントニオ猪木さんに北朝鮮側は、日本の国会議員らの訪朝を呼びかけた。

 日韓両政府は、米政府とともに、北朝鮮の姿勢の変化を冷静に分析する必要がある。そのうえで、正恩政権をどう実のある交渉テーブルにつかせるか綿密に調整するべきだろう。

 関係改善への道は、核問題や拉致問題などの課題の進展なしにはあり得ない。その原則を正恩政権は悟らねばならない。


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