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マックショック”の背景は

  • 2014/07/31 「NHK NEWS WEB “マックショック”の背景は」 (Link)

“マックショック”の背景は 7月31日 20時30分

ファストフードを代表するチェーン「マクドナルド」。数あるメニューの中でもチキンナゲットは看板商品の一つで、よく食べるという人も多いのではないでしょうか。 そのチキンナゲットの材料を加工していた上海の食品加工会社が、使用期限切れの食材を加工していたと中国メディアに取り上げられ、「マクドナルド」や「ファミリーマート」が相次いで商品の販売中止に追い込まれました。 定番メニューで起きてしまった今回の問題の背景について、経済部の橋本知之記者が解説します。

チキン商品販売中止相次ぐ

青く変色した肉。そして、いったん床に落ちた鶏肉を戻して混ぜる従業員—。 今月20日、中国メディアが伝えた「上海福喜食品」の映像は衝撃的な内容でした。そして、私たちをさらに不安にさせたのは、その材料を使っていたのが馴染みがある「マクドナルド」だったことです。

日本マクドナルドは、この報道の翌日、この会社の鶏肉を使ったチキンナゲットの販売を中止。しかし、消費者から不安の声や問い合わせが殺到し、4日後には中国製の鶏肉を使ったすべての商品の販売を中止することを決めました。

対象となる商品は「チキンナゲット」や「チキンクリスプ」など8種類。会社は鶏肉の仕入れをすべてタイに切り替えましたが、今でも全国すべての店で販売できないメニューがあります。

そして、この問題はマクドナルドだけにとどまりませんでした。大手コンビニの「ファミリーマート」も、この会社の鶏肉を使っていたとして、2つの商品が販売中止に追い込まれました。

ほかのファストフード店やコンビニチェーンも、問題となった上海の会社と間接的に取り引きしていないかや、仕入れ先の工場が基準どおりに材料を加工しているかどうかを緊急に調べるなど、動揺は業界全体に広がったのです。

品質のチェック態勢は

問題の発覚から1週間余りたった今月29日。「日本マクドナルド」のサラ・カサノバ社長が初めて記者会見しました。

問題となっている上海の加工会社は、アメリカ・イリノイ州シカゴ近郊に本社がある食品加工会社の子会社で、マクドナルドとは長い取引関係にありました。それだけに、会見に出席したメディアからは、鶏肉の品質や衛生面のチェック態勢がこれまでどうなっていたのか、質問が相次ぎました。

これに対してカサノバ社長は、繰り返し「厳しい品質管理を行っていた」と述べました。一方で、データの改ざんや二重のデータ管理が行われていたことが今回の問題だとしたうえで、「1つの都市の、1つの工場の、複数の従業員による悪意を持った行動だった」と説明。

つまり、マクドナルドとしては厳しい品質管理の基準は設けていたものの、それを守らなかった不心得者が工場の中にいた、ということを強調したのです。

どういった不正な行為が行われていたかは、まだ詳細が明らかになっていません。ただ、日本マクドナルド側に不正行為を見抜く機能が十分働いていなかったという点は見逃せません。

日本マクドナルドは、再発防止に向けて工場の中に監視カメラをつけることや、抜き打ち検査を行うことなどを検討しているということです。長年にわたる取引関係で相手への信頼も高まっていたのかもしれませんが、食の安全に関することでは、信頼しきることは禁物なのかもしれません。

“食の不安”は中国にとどまらず

今回の問題を受けて、日本マクドナルドは中国製の鶏肉の使用を取りやめ、すべてタイ製に切り替えました。さらに、今後も十分な供給を続けていくため、ブラジルからの調達も検討していくことにしています。

これについて、日本マクドナルドは「中国製の食材に対するお客さまの懸念が高まってきたため」だとしています。

ただ、同業他社からは戸惑いの声も聞かれます。私が取材したほかのファストフードチェーンの関係者は「国を変えればいいという問題でもない。今回の問題は、中国以外のほかの国でも十分起こることだ」と話していました。

実際、食の安全を巡る問題は各地で起きています。最近では、ベトナムから輸入した冷凍シシャモの入った段ボールにネズミの駆除に使われる殺そ剤が混入していた問題も発覚。去年の年末には、群馬県にある「マルハニチロ」の子会社が生産した冷凍食品から農薬が検出されました。

食品メーカーはできるだけコストを下げて安く商品を提供するため、材料の仕入れ先を中国をはじめ世界中に広げています。サプライチェーンが広がれば広がるほど、衛生面や品質の管理態勢をどう構築していくのか、各社とも難しい課題に直面していると言えます。

再発防止の鍵は

今回の問題とは別に、私は2300万件という膨大な量の個人情報が流出した「ベネッセコーポレーション」の取材も続けていますが、「マクドナルド」と「ベネッセ」の問題にはある共通点があります。

それは、会社内部ではなく、外部の業者が問題の発端となっていることです。マクドナルドは上海の加工会社、そして、ベネッセの場合はシステムの保守管理を委託していた外部業者の派遣社員による不正行為でした。

両社とも、提供するサービスの“根幹”とも言える仕事を、外部の業者が担っているのです。企業は業務を効率化するために外部委託=アウトソーシングを進めていて、こうした事情は一定の理解ができます。

ただ、2度と同じような問題を起こさせないためにも、法令順守=コンプライアンス教育を、社内だけではなく委託先や仕入れ先も含めた組織の末端まで徹底できるかが問われていると思います。

時間はかかるかもしれませんが、教育や研修を積み重ね、外部の業者も含めて隅から隅まで「コンプライアンス」の意識を高めていくことが、再発防止の近道かもしれません。


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