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焦点:NTTが狙う全国一律サービス見直し、光回線の卸売に思惑も

  • 2014/07/14 「焦点:NTTが狙う全国一律サービス見直し、光回線の卸売に思惑も | テクノロジーニュース | Reuters」 (Link)

[東京 11日 ロイター] - NTT(9432.T: 株価, ニュース, レポート)にとって、経営の重荷となっている加入電話などのユニバーサル(全国一律)サービス。長年の懸案であるこのサービス見直しに向け、NTTが動き始めているようだ。

同社が今秋から始める光回線サービスの丸ごと貸し出し事業(卸売事業)も、これにリンクしているとの思惑が浮上。業界の構図が変わるのか注目を集めている。

<赤字垂れ流し>

「特定の事業者、特定の技術、特定のサービスで『あまねく提供』はそろそろ見直す時期に来ているのではないか」──。NTT幹部がこう話すのは、東西地域会社に提供が義務付けられているユニバーサルサービスのことだ。

NTT東西地域会社は、電気通信事業法が定める「あまねく日本全国における提供が確保されるべき」サービスを提供する責務を負っており、加入電話や第一種公衆電話などを「どこでも、誰もが利用できる料金」で提供している。

しかし、その3つの特定による「どこでも、誰もが」のサービスは、携帯電話などの普及により需要が年々低下、最近では自宅に加入電話がない世帯も増えている。ピークの1996年度末に6146万件あった契約数は2013年度末に2300万件まで減少、この17年間で4割以下に落ち込んだ。

これに伴い、加入電話の売り上げも減り続け、ユニバーサルサービス収支は2006年3月期以降赤字に転落、直近の6年間は毎年1000億円規模の赤字を計上している。

ユニバーサルサービスをめぐっては、サービスを維持するために、業界が協力して費用を出し合う基金も設立されているが、支援は著しい高コスト地域に限定されており、スズメの涙だ。2013年3月期は1021億円億円の赤字に対し、補てん額はわずか68億円にとどまった。

先のNTT幹部は「赤字は他のサービスでカバーして最終的には黒字にしないといけない。他のサービス価格への影響もあり、赤字の垂れ流しを早く何とかしなければならない」と苦しい台所事情を明かす。

<伸び悩む光>

NTTも手をこまねいているわけではない。2010年11月に「PSTNのマイグレーションについて」を発表。従来型の固定電話網であるPSTNを光回線などのIP網に移行、2025年をめどに移行を完了させる計画を打ち出した。

NTTにとっては交換機ベースのPSTNを維持しながら、光回線を整備・維持するのは二重投資となるため、できればPSTNはなるべく早く廃止したいのが本音だ。

しかし、そのPSTNに乗る加入電話にはユニバーサルサービスの縛りがかかっており、そう簡単に廃止を口にはできない。ましてや、いくら加入電話が減っているとはいえ、まだ契約者が2300万件も残っている状況ではユニバーサルサービスのあり方を含めた代替サービスは提案しにくいというのが関係者の一致した見方だ。

NTT東日本の幹部は「加入電話があと何件残っているかは、廃止時期の問題とセットだ」と話す。

光サービスの需要を喚起することで加入電話からの移行を加速させる、そのためにはで他社の力を使ってでも光への移行を急ぐ──。

業界動向に詳しいある関係者は、NTTが光のサービス卸を始める背景には、こんな思惑もあるのではないかと勘繰る。ユニバーサルサービスのあり方を見直す議論ができる水準まで、早く加入電話を減らしておきたいという読みだ。

NTT東西地域会社の光回線契約数は3月末現在で1805万件。総務省によると、光ファーバー網の整備率は2013年3月末現在で97.5%まで進んでいるが、その利用は50.7%(同年12月末)にとどまっている。

<2020年の社会>

通信市場の競争政策のあり方を議論している情報通信審議会(総務相の諮問機関)2020─ICT基盤政策特別部会は、10日に基本政策委員会を開催した。ユニバーサルサービスのあり方について議論を始めたが、突っ込んだ意見交換は行われなかった。関係者は「まだ機が熟していないので問題意識として報告書に盛り込む程度だろう」との見方を示す。

ユニバーサルサービスを構成する、1)生活に不可欠なサービスであり、2)誰もが利用可能な料金で利用でき、3)地域間格差なくどこでも利用可能──という基本3要件を満たすサービスは時代とともに変化している。

先のNTT東日本幹部は「2020年にどんな社会を描くのか、それを実現するために必要なものは何なのか。メタルなのか、光なのか、無線なのか。それはわれわれが決めることではなく、国民が決めることだが、そろそろ議論をしてもいいのではないか」と話した。

(志田義寧 編集:田巻一彦)


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